自由貿易の罠 2018 9 15

 多くのメディアが、
いや、すべてのメディアかもしれませんが、
まるで「念仏」のように自由貿易の重要性を訴えていますが、
はたして、その自由貿易は公正なのか。
 私は、2018年7月1日の時点で、
各国の関税は、どうなっているのかについて書きました。
「世界における自動車の関税」
(排気量1800ccの乗用車の場合)
日本 0%
米国 2.5%
EU  10%
韓国 8%
中国 25%
豪州 5%
 こうした関税を残したまま、
自由貿易を推進してしまうと、
アメリカの自動車産業は壊滅してしまうでしょう。
 せめて、アメリカも関税を10%にしてから、
自由貿易を推進すればよかったのです。
 さて、なぜ、アメリカは、
気前良く自国市場を開放してきたのか。
 それは、米ソ冷戦時代に、
西側諸国の経済力を強化して、
ソ連に対抗するためでした。
 冷戦が終わった後は、
中国が台頭してきましたが、
多くのアメリカ人は、
「中国人が豊かになれば、
やがて中国は民主化される」と信じていました。
 現在の国際情勢を見れば、
アメリカは、気前良く自国市場を開放する理由がありません。
 もうひとつ書きましょう。
それは、各国にある「輸出補助金」の問題です。
(「ブルータスよ、お前もか」を参照してください)
 こうした輸出補助金の問題を無視して、
自由貿易を訴えることは、公正と言えるのか。
 自由貿易を声高に叫ぶ国ほど、
自国には関税や非関税障壁が山ほどあります。

ブルータスよ、お前もか Et tu, Brute? 2014 2 2

書名 アメリカは日本の消費税を許さない
著者 岩本 沙弓  文春新書

 「そりゃ、そうだ」
日頃から、オバマ政権を批判している私でも、
この問題に関しては、アメリカの言い分が正しいと思います。
消費税(付加価値税)とは、貿易振興策です。
 そもそも、アメリカが巨額の貿易赤字を抱えて、
ニクソン・ショック(金ドル交換停止)につながったのは、
欧州の「高率の付加価値税」が原因だったと思います。
 付加価値税は、一石二鳥です。
財政的には税収増につながり、
貿易では輸出企業に巨額の還付金が給付され、輸出強化策となります。
 逆に、付加価値税を導入していない国(アメリカ)からみれば、
欧州にアメリカ製品を輸出すれば、高率の付加価値税が課税され、
アメリカ企業には何の還付金もありません。
 これは、アメリカの輸出産業にとっては、
「非関税障壁」そのものです。
 ただし、アメリカにも油断があったと思います。
このような「例外ルール」を作った「GATT」を気前よく認めたことです。
(GATTとは、「関税及び貿易に関する一般協定」のことです)
 アメリカ人は、お人よしですから仕方ないことですが、
さすがは「人類の英知」と言われた欧州は外交上手です。
 そんな欧州の「成功」を見ていた日本としては、
「いつかは日本も付加価値税を導入して成功したい」と思っていましたが、
さすがに、アメリカの「同盟国」である日本としては、
アメリカの怒りを買うので、付加価値税を言い出すことができなかったのです。
 ところが、世界最速で進む少子高齢化によって、
少子化対策と高齢者福祉のために付加価値税を導入する大義名分ができたのです。
 しかし、アメリカからすれば、
日本も、欧州と同じようなことをするのかと見えてしまいます。
 そこで、「同盟国」の日本としては、
オバマ政権が推進する「TPP」加入という切り札を出したのです。
これならば、付加価値税とTPPで、日本とアメリカは公平になるのではないかと。
 さて、歴史に「if」はありませんが、
日本が、欧州型の付加価値税ではなく、単なる売上税を導入していれば、
それほどアメリカの怒りを買わなかったのではないかと思います。
 経済学者のクルーグマン氏の指摘は正しい。
"border adjustments"on VATs-taxes on imports,rebates on exports
(The Conscience of a Liberal,2009)
「付加価値税についての国境調整、すなわち輸入品には課税、輸出品にはリベート(還付金)」



































































































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